一、国及び国民のあり方について
 憲法に前文を設け、国及び国民のあり方について基本理念を明記する。
 現憲法の基本原理を継承し、発展させるとともに、日本の文化・伝統を尊重し、自由で創造性あふれ、思いやりのある自立国家日本をつくることを宣言する。
 日本は戦後、一貫して経済発展を国家目標に掲げそれに専念してきた。それによって失ったものも多く、いわゆる「戦後政治」は経済発展による利益の配分に終始してきた。その結果、日本人は社会共同体の構成員としての生き方、教育のあり方、安全保障の確保などをおろそかにしてきた。それにより、今、日本は方向性を失い、混迷の淵をさまよっている。一日も早く「戦後政治」と訣別し、新しい国家目標を掲げて、「自由で創造性あふれる自立国家日本」をつくらなければならない。そのため、次の事項を新しい憲法を創るための指針とする。
 (1)日本人の心と誇りを取り戻す。(2)自己中心的な社会から、規律ある自由に基づく開かれた社会に改める。(3)経済の活力を回復し、誰もが生き甲斐を持って暮らせる社会をつくる。(4)地球の平和と環境に自ら進んで貢献する。
 これらの指針に沿って、政治、行政、司法、地方自治、経済、教育等のシステムを抜本的に改革する。

二、天皇制について
 天皇は、国民統合のための歴史的文化的存在である。国家元首として位置も定着しており、国政に関する機能を有しないこと及び国事に関する行為の委任等について、現憲法の原則を変更する必要はない。
 ただし、「象徴」という表現に代わる用語の検討、国事行為に関わる規定の正誤の訂正等の整備を行う。

三、国民の権利と義務について
 国家権力と人権を対峙させる啓蒙時代の発想を克服し、ともすれば阻害されがちな個人の自由を国家社会の秩序の中で調和させる。基本的人権の保障は、国民が享有すべき条理であると同時に、国家社会を維持し発展させるための公共財であると位置づける。
 国民の諸権利と義務は、人類の普遍的原理に基づいて、日本のよき文化と伝統を踏まえるものとする。「公共の福祉」の概念を明確にし、用語を見直す。
「思想・信教の自由」については、政教分離の原則の意義を明確化し、価値多元化社会に適応する自由を確保する。国民の知る権利及びプライバシー権、外国人の人権保障とその合理的限界、犯罪被疑者と被害者の人権保護の調整等を
検討する。
 自由で公正かつ規律ある経済活動を確保し、勤労者の社会的権利の拡大と経済的発展によって国家社会の安定を図るものとする。
 教育、環境保全、社会保障については別項に記載する。

四、安全保障について
 二十世紀に人類が起こした悲劇を繰り返さないために、現行第九条の理念を継承する。同時に、二十一世紀においては旧世紀の戦争観にとらわれない新しい安全保障の概念を創造する。新世紀において日本が平和を維持し存続していくためには、国際社会との真の協調を図らなければならない。もはや、個別的自衛権や集団的自衛権だけで自国の平和を守ることは不可能である。
 そのためには、外交努力に全力を尽くし、国連による集団安全保障を整備するとともに、国連を中心としたあらゆる活動に参加する。さらに、日本が率先して国連警察機構創設を積極的に提唱する。同時に、人類を破滅に導く大量破壊兵器の全廃を推進する。
 自衛隊の権限と機能、内閣総理大臣の指揮権を、憲法に明記し、シビリアン・コントロールを徹底させる。日本が侵略を受け、国民の生命及び財産が脅かされた場合のみ武力により阻止することとし、それ以外の場合には自衛権の名の下に武力による威嚇またはその行使は一切行わないことを宣言する。緊急事態体制を整備する。
 
五、立法権について
 政府委員制度の廃止や党首討論制度をはじめとする国会活性化法の制定は、憲法慣例の改革であった。今後も、国民の選挙によって構成する国会が、国権の最高機関として名実ともに機能するよう、抜本的な整備を行う。代表制民主制度の基本を維持しつつ、社会状況の変化・進展に伴い直接民主制度による補完によって、形骸化した議会制民主主義の真の民主化を図り国民主権を確立する。インターネット等情報技術の発展に伴う社会状況の変化に対応できる民主政治の新しいシステムを検討する。
 現行の両院制は抜本的に改善する。特に、構成の方法について、参議院は間接選挙や推薦制度の導入を検討する。両院の権限や機能の分担を徹底させ、参議院の役割を国政に対して大所高所から指導・進言するものとし、国政運営の民主化と効率化を図るものとする。
 憲法の国会に関する規定の多くが実定法であり、現行の解釈や運用に議論がある曖昧な表現、誤った用語等について整備する。また、議員の権限や責任、議事運営等について、二十一世紀の新しい社会状況を踏まえ、全面的に見直しを行う。特定の要件に限定して国民投票制度を導入する。政治倫理の確立については、議院の自浄機能として憲法上の制度を整備する。

六、行政権について
 首相公選制は、慎重かつ冷静な論議が必要である。首相のリーダー・シップは、政治家としての資質や政治文化によるものであり、制度によって保証されるものではない。むしろ、議院内閣制の整備によって効果的に発揮できるものである。国家の最高権力者の選出は、代表制民主制によることが、日本の歴史や民族性から適切である。
 議院内閣制は、国会と内閣が対立するものではなく、政府与党と野党が対立するものである。日本では官僚政治が続き、議会民主政治の定着と発展に問題があるため、国民の多くは行政権が、国会より上位であるとの意識を持っている。これを打破するため、立法権優位の原則に基づいて、行政権の位置づけを明確にする。
 中央行政府の役割を国家の維持と発展に必要かつ最小限なものとし、大胆な地方分権を断行する。例えば、マクロ経済政策、外交・防衛、災害等危機管理、基礎教育、治安維持、市場ルールの形成、環境保全、基礎的社会保障の整備、金融システムの安定、国家プロジェクト等に限定する。
 縦割りとしがらみによって硬直化した官僚支配体制を改革するために、内閣の総合調整機能を強化し、首相の行政各部に対する直接的指揮監督権を確立させる。また、大規模自然災害、原子力災害、犯罪の国際化、テロ等に対する危機管理体制を確立して、必要に応じて国及び地方の権限を首相に集中できる体制を整備する。

七、司法権について
 日本は現在、驚異的な情報技術の発展や米・ソ冷戦の終結などによるグローバル化の波に洗われている。世界経済は全地球を統合する形で大競争の時代に入り、それに伴う法的処理の増加と多様化、また、犯罪の国際化や凶悪化などに対して、従前の司法システムでは、適切に対応できない。
 政府の司法制度改革審議会で、司法制度の抜本改革について論議が行われているが、憲法の枠の中での論議であり限界がある。真の司法権の独立と新世紀の法秩序を維持するため憲法の見直しを行う。
 「憲法裁判所」を設置し、形骸化した違憲立法審査権の機能を再生させるとともに、特定の行政訴訟等も担当するものとする。これにより、一般裁判所の業務を軽減することになり、迅速で適切な事案の処理が可能となる。
 内閣の指名に基づいて天皇が指名する最高裁判所の長官及び、内閣が任命する最高裁判所の裁判官について、国会の承認を必要とするなど、行政権の関与を減少させる。なお、最高裁判所の裁判官の国民審査制度は廃止する。

八、地方自治について
 健全な民主主義の発展と豊かな国民生活の実現、そして日本人の伝統と文化の継承は、地方分権の推進と真の地方自治の確立によって可能である。日本の国家統治の歴史は、中央集権から地方分権、そして中央集権と繰り返しながら、人的、物的資源を活性化させてきた。新世紀こそ地方の時代である。地方自治体が中央政府に従属する関係から対等となる関係に改めるために、憲法において、地方自治の意義と中央政府と地方自治体の役割を明確にする。
 さらに、地方自治体に対する中央政府の規制権限の撤廃、税財源の確保、エコ・マネーの導入、NPOとの連携等、地方自治体が独自の特色ある活動ができる根拠規定を設ける。
 地方自治体がその行政を一貫して自主的、自律的に企画、立案、調整するためには、行政基盤を強化しなければならない。さらに財源を確保し、効率的な行政を推進するため、現在全国に三千二百余ある市町村を段階的に三百程度を目標に合併統合する必要がある。それにより、文化的・経済的・地理的に共通な地域コミュニティを形成し、中央政府と対等な関係に立つことができる。そのための整備は中央政府の責任であり、それに必要な根拠規定を設ける。

九、財政について
 激動する内外の諸問題に対処するため、国の財政運営が公正で健全でなければならない。現在の日本の財政は破綻状況であり、無定見な財政・経済運営が原因である。また、予算の単年度制度による消化ノルマの弊害も原因の一つであり、単年度予算制度及び財政状況の報告制度について見直しを行う。
 宗教団体及び慈善・教育・博愛等の事業に対する公金の支出等の禁止規定を廃止して、必要な措置は法律事項とする。
 会計検査院を国会の機関とし、公正を確保し責任の明確化により、国民の立場による検査を確保する。

十、教育及び文化について
 人づくり国づくりの基本は教育にある。「教育及び文化」の章を憲法に設けて、教育の基本理念と教育・文化行政のあり方について明記する。
 人間は、生物的にも生理的にも「社会的動物」として創られている。また、進化の過程で、精神的にも肉体的にも長期間の教育と躾が欠かせない動物となった。人間は「文化的動物」でもある。「文化的」とは、祖先が創ったものを踏襲して、さらに改革する能力を持つことである。教育の原点はここにある。
 日本人は古来、世界の様々な文化を取り入れて融合し、独自の文明をつくり上げてきた。この日本人の心と誇りを取り戻すことが必要である。その上に新たな文明を築いて人類に貢献しなければならない。祖国と世界の平和と繁栄に寄与する知識と志と活力を持つ青少年の育成が教育の目標である。
 現行教育基本法では「人類の福祉」と「個人の価値」が力説されているが、「類」と「個」の間に必要な「種」の役割が欠落している。「種」とは、家庭や郷土や国家共同体であり、これらは、青少年に「躾」を通して人間形成の基本を学ばせる場である。
 特に重要なのは義務教育である。基礎学力を重視するとともに、日本人の伝統的な資質を育み、次の時代を担い得る「よき日本人」を育てる責任をもっている。そのために、官僚支配の教育行政を改革し柔軟で民主的運営を図るため、地域に「教育オンブズマン制度」を設ける。また、教師が次代の日本人を育てる崇高な職務であることに鑑み、地位と名誉等の保証を国が行うなど、必要な制度を整備する根拠規定を設ける。

十一、環境・社会保障について
(1)環境問題について
 環境問題は、「人類存続の基盤である地球環境の保全に全力を尽くさなければならない」と位置づける。国民の環境権の確保という立場からだけでなく、保全の義務として憲法に規定を設ける。
 環境破壊は、人間が生きること自体から発生して資本主義のあり方と直結する問題である。自然といかに共生していくかが、これからの人類の課題であり、自立した国家として人類・地球の問題を自分自身の問題として考え、地球の一員としての義務としてその解決に積極的に参加、貢献する。
(2)社会保障について
 自律した個人が多様な選択肢と公正なルールのもとで、自らの生き方を創造的かつ自由に追求できる創造的自由主義社会を創るためには、新しい社会形態、税制、雇用システム、地域共同体を確立することが必要である。さらに、国民の命や生活の維持、発展に必要な仕組み、即ち、基礎的社会保障(基礎的年金・介護・高齢者医療)を国の責任で整備することを憲法に明記し、誰もが生き甲斐を持って安心して暮らせる社会をつくる。

十二、改正手続について
 現行の改正規定は、制定過程の特殊事情により、異常な改正手続となっている。「各議院の三分の二以上の賛成」という発議要件を「過半数」の要件に改める。国民投票による承認制度は存続させる。
 なお、現行憲法の改正手続制度(国会法の改正、憲法改正国民投票法)が整備されておらず、早急に関係法規の制定を行う。

 



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